当基金の紹介

当基金の活動状況について

  当基金は、経済的弱者及び社会的弱者に対して援助を行い、その権利を擁護し社会正義を実現することを目的とした法人です。
  設立趣意書にあるとおり、昭和58年4月、札幌弁護士会の創立100周年事業の一環として設立され、平成25年度より公益財団法人として新たなスタートを切り、これまで社会的弱者や経済的弱者の司法による救済に向けての調査・研究事業及び訴訟活動への助成を中心とした事業を展開してきました。
  直近4年間についての主な事業を紹介しますと、法律相談事業への援護として札幌弁護士会が行う高齢者・障害者等への法律相談、女性のための女性弁護士による無料電話相談などに対して援助を行うほか、以下の調査研究があります。
【令和元年度】
・道立高校国賠請求控訴事件に係る意見書及び調査費用
・悪質商法被害対策北海道被害対策弁護団(占いサイト運営会社に対する訴訟遂行)
・「子供シェルター全国ネットワーク会議」を通じてのNPO法人子どもシェルターレラピリカの運営等に関する調査研究
【令和2年度】
・ 福島県から道内への避難者による国賠訴訟の提起
【令和3年度】
・「結婚の自由を全ての人に」訴訟事件に関する調査研究
【令和4年度】
・知床観光船事件被害者弁護団
・アイヌ民族の漁業権確認請求訴訟の対応、並びにCCPR第7回日本政府定期報告に関する意見書提出手続き及び審査会場(ジュネーブ)での自由権規約委員会に対する情報提供・陳情活動等のアイヌ漁業権の権利擁護事業
・聴覚障害を持つ子が日本手話で授業を受けることが人権であることを認めさせるための活動
等です。
  いずれも経済的弱者、社会的弱者の権利を擁護する上での司法的救済が必要な方々への支援に繋がります。
  当基金としては、微力ではありますが、今後も同様の活動を続け、設立趣意書の想いを今に生かし続けたいと思っております。
  今後とも当基金に対し、ご支援、ご協力頂きますようお願い致します。
2023(令和5)年6月
理事長 山﨑 博
(札幌弁護士会所属弁護士)

札幌法律援護基金設立趣意書

  すべての人は、個人として尊重され、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有しています。わが国では、このような権利を実現するために、種々の立法がなされ、最近、特に、貧困な者、消費者などいわゆる社会的弱者の権利を保護するための諸立法がなされております。しかし、いわゆる社会的弱者がこれらの諸立法による権利を享有しようとすれば、最終的には裁判に頼らなければなりません。ところが、古来より、裁判には多額な費用、時間及び法律知識ならびに法廷技術が必要とされ、このことは今日でもかわりありません。そうして、いわゆる社会的弱者は、多額の費用、法律知識ならびに法廷技術を持っておらず、裁判による権利の実現をはかることができない状態にあります。このような社会的弱者の権利実現を援助するため、弁護士会、地方公共団体は、住民福祉の一環として無料法律相談を行ない、財団法人法律扶助協会は法律扶助事業を行なってきました。しかし、このような制度のもとにあっても、権利の実現・救済は充分ではなく、その充実が必要とされています。すなわち、財団法人法律扶助協会の扶助事業は、予算規模も小さく、その事業も勝訴の見込ある民事事件についての裁判費用の立て替えに限られています。このため、勝訴しても相手方より金銭を取り立てることのできない事件などでは、将来立替金を返済する余裕のない経済的弱者は財団法人法律扶助協会の法律扶助の利用は困難です。また、少年事件については、刑事事件のような国選弁護人制度もなく、法律扶助制度もなく、貧しい少年は、弁護士による権利保護の機会を奪われ、非行から立ち直る機会を奪われています。
  そこで札幌弁護士会は、創立100 周年を迎えるに当たり、基本的人権を擁護し社会正義を実現するという弁護士の使命にかんがみ、創立100 周年記念事業の一環として、財団法人札幌法律援護基金を設立し、主として、いわゆる経済的弱者および社会的弱者のために、法律相談、民事・少年事件の裁判に要する諸費用の援助、法律問題に関する講演会・出版などの法律知識の啓蒙及びこれらの諸事業を行なう団体に対する援助を行ない、もって、国民の基本的人権を擁護し、全ての人が、健康で文化的な生活を営む権利を実現するため寄与しようというものであります。

昭和58年4月20日
財団法人札幌法律援護基金
設立代表者 水原清之